健康寿命の大敵「脳卒中」

こんにちは!のうきんです!

いよいよ、この心血管ピラミッドシリーズも最後になります。

今回は健康寿命に最も影響を与えている疾患、

脳卒中について深掘りします。

心血管疾患についてはごちらをどうぞ。

本ブログのテーマである、「健康寿命を伸ばす」ということと

脳卒中は切っても切り離せない関係にあります。

また個人的には、脳外科医として専門であるこの領域については

少し熱くなるかもしれませんが、是非最後までついてきてください笑

それでは一緒に見ていきましょう!

脳卒中とは!?

まずは脳卒中という言葉について確認していきましょう。

脳卒中の「卒」とは卒然に、という意味でわかりやすく言えば、

突然に、という意味です。

また中は「あたる」と読み、何かが当たる、という意味になります。

中毒などは毒に当たる、ということになりますね。

まとめると、脳卒中とは「脳に突然に何かが当たる」という意味になります。

これだけだとわかりにくいですが、

脳に何かが突然起こる、というような印象を持っていただければよいです。

また脳卒中には同義の言葉として脳血管障害があります。

これは読んで字の如く、脳の血管の障害です。

これらを合わせて、

脳の血管に突然に障害が起こった状態を脳卒中(脳血管障害)と呼びます。

具体的には脳卒中は以下の3つの疾患に分かれます。

  1. 脳梗塞
  2. 脳出血
  3. くも膜下出血

それぞれ脳の血管に異常が生じた状態であり、

脳梗塞は血管が詰まったもの

脳出血・くも膜下出血は血管が破れたもの

となります。

ちなみに、外傷など怪我による出血は脳卒中には含みません。

具体的な疾患の特徴については後で述べるとして、

次に脳卒中が健康に対して与える影響を見ていきましょう。

平均寿命・健康寿命と脳卒中

まずは心筋梗塞でも確認したこちらの図について確認してみましょう。

                         令和3年(2021) 人口動態統計月報年計(概数)の概況      

2021年の死因ランキングを見ると、第4位(7.3%)にランクインしています。

次に健康寿命についてみていきます。

                                           厚生労働省 国民生活基礎調査の概況

2019年の国民生活基礎調査では、最も必要な介護量の高い要介護4~5において、

脳卒中は原因となる疾患第1位となっています。

また要介護者全体の人数、要介護1〜3の人数についても、

認知症に次いで脳卒中は第2位につけています。

このように脳卒中は平均寿命、健康寿命の両者に大きく影響してきます。

脳卒中の3疾患

それでは、脳卒中を構成する3つの疾患について、詳しくみていきましょう。

脳梗塞

脳梗塞は血管の詰まり方や、血管の場所において、大きく3種類に分類されます。

  1. 心臓から血栓が飛んできて詰まる心原性脳梗塞
  2. 動脈硬化により血管が細くなるアテローム血栓性脳梗塞
  3. 深部の細い血管が詰まるラクナ梗塞

心原性脳梗塞の病態は不整脈によって心臓内にできた血栓が

血流に乗って脳血管に詰まるというものです。

そのため、この種類については生活習慣の改善というよりも不整脈の治療が重要となります。

一方、残りの2種類については、死の四重奏の管理が極めて重要です。

詳細については後述します。

脳出血

出血については、脳出血とくも膜下出血と何が違うの?

と思われる方もおられるかもしれませんが、

基本的に脳出血は脳の中に出血したものとなります。

出血する部位によって

被殻出血(ひかく)、視床出血(ししょう)、脳幹出血(のうかん)などと呼ばれます。

脳梗塞とは機序が違いますが、

いずれにせよ脳細胞が不可逆的なダメージを受けるため、

手足の麻痺が出たり、思うように喋れなくなったり、意思疎通が取れなくなったりします。

くも膜下出血

脳出血が脳の中の出血と言いましたが、

くも膜下出血は名前の通り、くも膜と呼ばれる脳を覆う膜の下に出血します。

くも膜下出血を発症した場合、

後遺症なく社会に復帰できる可能性が1/3

生存できるが大きな後遺症が残る可能性が1/3

死亡する可能性が1/3

と言われている、とても怖い病気です。

また発症時にこれまで経験したことのないほどの頭痛が生じることでも有名です。

くも膜下出血の原因の9割は

脳動脈瘤と呼ばれる動脈のコブが破裂することと言われています。

そのため、くも膜下出血の予防としては定期的な脳ドッグの受診を行い、

脳動脈瘤の早期発見が有効です。

ただし、脳動脈瘤の形成については遺伝の他に生活習慣が密接に関わってきます

食生活改善による脳卒中の予防

では脳卒中についてどのように予防をすれば良いでしょうか。

もちろん、死の四重奏の予防が重要です。

それぞれ確認していきましょう。

高血圧

死の四重奏の1つ、高血圧はいずれの脳卒中においても、最も危険度の高い疾患です。

血圧が上がれば上がるほど、脳卒中の発症頻度は上昇します。

また降圧による脳卒中の予防効果は若いほど高いとされており、

早期からの降圧がより脳卒中予防に有効と言えます。

目標とすべき血圧は、概ね収縮期血圧が120〜140mmHg程度とされており、

120mmHg以下まで低下させる必要はありません。

しかしその他の死の四重奏を持っている方や、

過去に心筋梗塞・脳梗塞を起こしたことのあるような方は

より積極的な降圧が推奨されます。

また高齢者では上述の通り、降圧効果が若年者と比較し弱くなるため、

65歳以上の方であれば、収縮期血圧が150〜160mmHg程度で大丈夫です。

これは、高齢者では血圧を下げることによるその他の臓器の

合併症を起こすことが多くなるからです。

高血圧についての詳しい予防法などはこちらからどうぞ。

糖尿病

糖尿病ももちろん脳卒中の危険因子です。

その他の死の四重奏と相まって脳卒中の発症リスクを高めます。

糖尿病患者において、良質な食事、禁煙、運動を心がけた人は、

そうでない人と比較し、心血管疾患の発症率、死亡率とも低下します

糖尿病についてはこちらもご覧ください。

脂質異常症

動脈硬化の原因であるプラーク形成に、直接関係する脂質異常症も

もちろん脳卒中の重要なリスク因子です。

ただ脂質異常症はプラーク形成に関わるため、

最も大きく影響するのはアテローム血栓性脳梗塞です。

アテローム血栓性脳梗塞は脳血管にプラークが蓄積することで

発症する脳梗塞であるため、もちろんプラークを形成する

脂質異常症が関係します。

脂質異常症やプラーク形成についてはこちらでご確認ください。

肥満

死の四重奏の根底にある病態である肥満である方は、正常体重の方と比較し

心血管疾患の発症率が1.5倍高くなると言われています。

肥満はそれだけで脳卒中のリスクと言われていますが、

その他の死の四重奏を誘発するリスクも備えていますので、

予防する価値が十分にあります。

肥満やメタボリックシンドロームについての記事はこちら。

飲酒・喫煙

死の四重奏以外に飲酒と喫煙についても触れておきます。

どちらも健康に悪いイメージがありますが、飲酒については一概にそうとは言えません。

脳梗塞については心筋梗塞と同様、少量の飲酒であれば

むしろ発症の予防につながることがわかっています。

e-ヘルスネット様より引用:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-03-001.html

ただしこれも心筋梗塞と同様ですが、大量の飲酒はむしろ発症率の上昇につながります。

また脳出血・くも膜下出血などの出血性疾患については

飲酒量が増えるごとに発症のリスクが上昇することがわかっていますので、

健康になるためにあえて飲酒をする、と言うのは現実的ではないと思います。

そのため、健康日本21では禁酒ではなく、節酒を推奨されています。

しかし喫煙は脳卒中のいずれの疾患においても危険因子となります。

また喫煙本数が多いほど、リスクは高くなりますが、

1日1本しか吸わない場合でも、1日20本吸った場合の半分程度

脳卒中発症のリスクがあるとわかっています。

つまり飲酒と同様、喫煙も多ければ多いほどリスクは上がりますが、

喫煙は少量でも害がある、と言うことです。

要するに禁煙が重要です。

まとめ

いかがでしたか!?今日のまとめは以下の通りです。

  1. 脳卒中は脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の総称
  2. 脳卒中は死因:第4位、介護が必要となる原因:第1位
  3. 死の四重奏、飲酒・喫煙が脳卒中の危険因子となる

今回は健康寿命を伸ばすための最重要疾患である、脳卒中について解説しました。

脳卒中は前兆が少なく、突然発症することが多いです。

そして一度発症してしまうと、大きな後遺症が残る可能性が高いです。

ベタな表現ですが、後悔は先に立ちません。

手遅れになる前に、是非ご自分の食習慣を見直してみましょう

そしてついに今回で、心血管疾患ピラミッドシリーズの解説は終了です。

皆さま本当にお疲れ様でした。

何度も同じことの繰り返しになりますが、死の四重奏を避けるだけで、

心筋梗塞、脳梗塞の発症リスクを大きく下げられます。

ご自分の食生活と照らし合わせて、ぜひ今回のシリーズをご一読ください。

今回も最後まで読んで頂き、ありがとうございました!

健康な食事で豊かな未来を!

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のうきん
ボディーメイクをきっかけに栄養の重要性に目覚めた現役脳外科医。 病院内では手術で、病院外では栄養で。 日本の健康寿命を伸ばします。