死の四重奏 第一曲 〜肥満〜

こんにちは!のうきんです!

今回から心血管疾患につながる基礎疾患4つ(死の四重奏)について解説していきます!

死の四重奏についてはこちらもご確認ください。

今回は死の四重奏の中でも最も根幹に存在する病態、肥満について解説していきます。

肥満は見た目の問題だけではなく、

あらゆる疾患につながる病気と言っても過言ではありません。

しっかり勉強していきましょう!

肥満?肥満症?

まずは、医学的な肥満の定義についてです。

肥満はBMI(body mass index)が25以上の方を指します。

ちなみにBMIは体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で計算できます。

さらにBMIの大きさによって、以下の通り分類できます。

BMI判定WHO基準
25.0 ≤ BMI < 30.0肥満(1度)Pre-obese
30.0 ≤ BMI < 35.0肥満(2度)Obese class I
35.0 ≤ BMI < 40.0肥満(3度)Obese class Ⅱ
40.0 ≤ BMI肥満(4度)Obese class Ⅲ
                   日本肥満学会(肥満度分類)

そして似たようなものとして肥満症というものもあります。

これは肥満に加えて、下記の11個の合併症のいずれかを伴う

もしくは内臓脂肪型の肥満であることが基準になります。

  1. 耐糖能異常(糖尿病) 
  2. 脂質異常症
  3. 高血圧症
  4. 高尿酸血症・痛風 
  5. 冠動脈疾患・心筋梗塞・狭心症 
  6. 脳梗塞・脳血栓症・一過性脳虚血発作 
  7. 脂肪肝 
  8. 月経異常・不妊 
  9. 睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
  10. 運動器疾患・変形性関節症・脊椎症
  11. 肥満関連腎臓病 

内臓脂肪型肥満: 腹囲 男性:85cm以上 女性:90cm以上

つまり、

肥満であることにより、何らかの健康障害を既に発症している

もしくは発症する可能性が高い状態のことを言います。

ちなみにBMIが35以上の場合、高度肥満症と呼ばれます。

では筋肉質で体重が重い人と、脂肪で体重が重い人が同じBMIであった場合、

健康に関するリスクも同じなのでしょうか。

実はBMIが30までであれば、肥満でない人と比較しても心疾患のリスクは変わらない

というデータもあり、BMIだけで健康障害のリスクを考えるのは難しそうです。

体脂肪率で評価するという方法もありますが、

これについては測定方法が定まっておらず一般化した評価は未だ困難です。

そこで重要になってくるもう一つの要素が脂肪がついている場所です。

では、どのような部位で分けられているのか、確認していきましょう!

脂肪のつく場所によって危険度が違う!?

脂肪は内臓脂肪皮下脂肪という分類があります。

内臓脂肪という言葉は肥満症の中にも出てきましたが、

何らかの健康障害を引き起こす可能性が高い状態、と考えていただければ良いです。

   Kao様HPより引用

画像はKao様のHPより引用させていただいております。こちらもご参照ください。

皮下脂肪は皮膚と筋肉の間に溜まるのに対して、

内臓脂肪は腹壁と呼ばれる筋肉群の内側、腹腔内に存在し、

胃や腸管などの内臓器の周囲に沈着します。

どちらも過剰に摂取したエネルギーが蓄積したものですが、

皮下脂肪は徐々に蓄積し、徐々に消費される

内臓脂肪は急速に蓄積し、急速に消費される

といった特徴を持ちます。

そのため、皮下脂肪は定期預金、内臓脂肪は普通預金、

などとも言われます。

では、これらと疾患との関係はどうなのでしょうか。

肥満と心血管疾患

以前は、心血管疾患の最大のリスク因子はコレステロールである、と言われてきました。

しかし、そのほかに高血圧・糖尿病・肥満の3つの要素があり、

それらを3つ以上持つことで、心血管リスクが30倍以上になる

という報告が2001年にされました。

肥満は4つのリスク因子の1つという扱いから注目を受けましたが、

内臓脂肪の存在が、その他の3つの因子(高血圧・脂質異常症・糖尿病)のリスクになる

という報告が数多く見られるようになりました。

内臓脂肪は様々な生理活性物質(ホルモンのようなもの)を分泌しているのですが、

過剰な内臓脂肪の蓄積により、

アディポネクチンと言われる代謝を助ける生理活性物質が減少します。

代謝が悪くなった結果、

  1. 脂肪が蓄積したり、
  2. インスリンの効果が弱くなったり、
  3. 血管が広がらずに血圧が上がる、

といった作用が起こります。

さらに内臓脂肪をCTで評価する方法も考案され、

内臓脂肪面積≧100cm2がリスクということもわかりました。

そして内臓脂肪の評価方法として、腹囲を用いた簡易法も同時に考案されました。

その結果、2005年に誕生した概念が、

内臓脂肪の蓄積を必須条件としたマルチプルリスクファクター症候群である

メタボリックシンドロームです。

(マルチプルリスクファクター症候群とは、上記4つの疾患を複数個持つ状態のこと)

厚生労働省 e-ヘルスネット様より参照 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-01-003.html

そのため内臓脂肪蓄積型の肥満は、

高血圧・脂質異常症・糖尿病の基盤とも言える重要な疾患と言えるのです。

肥満と食事の関係は?

では肥満を改善させるためにどのような食事を摂ればいいでしょうか?

最も基本的な対策は適切なエネルギー量を摂ることです。

以前に必要なエネルギー摂取量について、国立健康・栄養研究所の推定式を紹介しました。

しかし糖尿病の場合、異なる計算式を用いると説明しました。

これと同様に、肥満症の患者でも以下のように独自の計算式が使用されています。

総エネルギー摂取量=目標体重(kg)×エネルギー係数

目標体重は、年齢を問わずBMIが22となる体重とされており、

エネルギー係数は

肥満者:25以下 高度肥満者:20〜25以下

とされています。

これは国立栄養・健康研究所の推定式と比較すると、

かなり低いエネルギー量になります。

肥満症患者では、何より摂取エネルギー量を下げることが重要と言えそうです。

また同じエネルギー摂取量であっても、

由来する栄養素の種類によって健康へのリスクが変わりますので、

ぜひ栄養素レベルで必要な摂取量を考えてみてください。

そして目指すべき体重についてですが、全年齢において、

概ねBMI:22〜25が最も死亡率の低い体重とわかっています。

詳しくはこちらをご確認ください。

そのため、最終的にはこの値を目指していきたいところです。

しかし、既に肥満と診断されている方は肥満の程度にもよりますが、

いきなりBMI25以下を目指す、というのは想像以上にキツいものです。

実際に、高血圧・脂質異常症・糖尿病のいずれかをもつ肥満症の方で、減量により

これらの疾患の検査値が改善した方達の体重減少率は7〜10%と言われています。

さらに特定保健指導と呼ばれる、

メタボリックシンドロームのリスクが高い方を集めた研究では、

6ヶ月で3%以上の減量に成功した方達は、健診での検査項目の改善が認められた

という報告もあります。

このように、たとえ現在肥満症であったとしても、いきなり過度の減量を行う必要はなく、

時間をかけて数%からの減量を行うだけで減量の効果が期待できるというわけです。

日本肥満学会でも

25≦BMI<35で3%の減量

35≦BMIで5〜10%の減量

を提案しており、特に軽度の肥満症において緩徐な減量を推奨しています。

またエネルギー摂取量を減らして体重が減少しても、

それに伴い消費エネルギーも少なくなります

そのため短期間で減量を目指したとしても、どこかで摂取量と消費量が頭打ちになり、

いずれ体重減少は止まります。

その時点で再度エネルギーバランスを検討し、

エネルギー摂取量を再設定する必要があります。

このように、

時間をかけてエネルギーバランスをコントロールすることが最も早い近道

と言えそうですね。

具体的には、多くの研究で4ヶ月を介入期間としていますので、一つの参考とできるでしょう。

まとめ

いかがでしたか!?今日のまとめは以下の通りです。

  • BMI:25以上で肥満、35以上で高度肥満
  • 内臓脂肪は高血圧・脂質異常症・糖尿病のリスク
  • 体重減少はまずは4ヶ月で3〜10%程度を目指す

風邪は万病のもと、と言いますが、肥満もまた万病のもとです。

正しい食生活を行い、見た目はもちろん、健康にも良い体型を手に入れましょう!

今回も最後まで読んで頂き、ありがとうございました!

健康な食事で豊かな未来を!

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のうきん
ボディーメイクをきっかけに栄養の重要性に目覚めた現役脳外科医。 病院内では手術で、病院外では栄養で。 日本の健康寿命を伸ばします。