こんにちは!のうきんです!
今回も心血管疾患につながる基礎疾患4つ(死の四重奏)について解説していきます!
死の四重奏についてはこちらもご確認ください。
今回は、長らく動脈硬化の最大のリスクとされてきた脂質異常症について
解説していきます。
脂質異常症は肥満から続く生活習慣病であり、
メタボリックシンドロームの構成要素の1つです。
また複数の病態の総称であるため、他の2つと比較し病態の把握がやや難しいです。
わかりやすく解説していきますので、ぜひご一読ください!
それではみていきましょう!
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脂質異常症の定義・分類
それではこれまで通り、脂質異常症の定義からみていきましょう。
脂質異常症は上記の通り、複数の病態があります。
それは、
- 高LDL-C血症(LDL-C>140mg/dl)
- 低HDL-C血症(HDL-C<40mg/dl)
- 高TG血症(TG>150mg/dl)
の3つです。
ちなみに略語は以下の通りです。
LDL-C: LDLコレステロール
HDL-C: HDLコレステロール
TG: トリグリセリド
LDL、HDLについては以前に説明しましたので、こちらもご参照ください。
簡単にまとめると、
LDL-C、HDL-Cはリポたんぱく質と言うたんぱく質に取り込まれたコレステロールで、
LDL-Cは悪玉コレステロールと呼ばれる健康に良くないコレステロール
HDL-Cは善玉コレステロールと呼ばれる健康に良いコレステロール
になります。
つまり、
高LDL-C血症は健康に良くない悪玉が多すぎるため異常
低HDL-C血症は健康に良い善玉が少なすぎるため異常
というわけです。
以前は高脂血症という名前でしたが、
HDL-Cの低下も病的意義を持つことがわかったため、
2007年より脂質異常症という呼び方に統一されました。
次にTGについてです。
TGは中性脂肪とも呼ばれるもので、脂質の一種です。
構造としては、グリセロールと呼ばれる物質に脂肪酸が3つ、くっついた形をしています。
TGは中性脂肪と呼ばれる通り、酸塩基平衡において中性を示す脂肪であり、
体脂肪になる成分です。
TGは重要なエネルギー源として、血中に含まれていますが、
過剰なTGは皮下脂肪もしくは内臓脂肪として貯蔵されます。
この辺りの話は肥満の稿でも説明していますので、ご参照ください。
人体にとって、最も使用効率の良いエネルギー源は糖質から生成されるグルコースであるため
エネルギーを使用するのに有用なのは糖質です。
一方、エネルギー源として貯蓄をするのに有能なのはTGです。
なぜならTGは1gあたり9kcalと、最もgあたりの産生エネルギーが高いからです。
そのため過剰のグルコースは体内でTGに変化して貯蔵されることとなります。
TGが過剰に血管内に溢れると、動脈硬化を促進することがわかっているため、
高TG血症も心血管疾患のリスクと言えます。
以上のように脂質異常症と一口に言っても、実際は3つの病態の総称なんですね。
ではこれらが疾患とどのように関わっているのか、見ていきましょう!
脂質異常症と疾患の関連
高LDL-C血症
LDL-Cと心血管疾患の発症リスクを比較した研究では、
LDL-Cが30mg/dl上昇する毎に男性:1.3倍 女性:1.25倍
の上昇が見られています。
また45歳時のLDL-Cの値を160mg/dl以上と以下でグループ分けした場合、
心筋梗塞、狭心症の生涯発症率は160mg/dl以上: 47.2% 160mg/dl以下: 13.7%
とされています。
ちなみにこれは男性だけの値であり、女性については明らかな差は見られていません。
低HDL-C血症
約10年という長期間の追跡研究を行なった日本の研究では、HDL-Cの低下は
原因を問わない死亡数と、脳卒中に関連した死亡数の増加に影響したとされています。
診断基準となっている40mg/dlの前後で比較すると、
40mg/dl以下の人は、以上の人に比べて
1.3倍、心筋梗塞・狭心症になりやすい
と報告されています。
高TG血症
TGの値は空腹時と随時(時間の制限が無い)の採血で基準値が異なりますが、
いずれにせよ、基準値以上で心筋梗塞・狭心症と脳梗塞のリスクが上がる
ことが証明されています。
ちなみに上述の診断基準は空腹時のものであり、
随時採血ではTG>175mg/dlとなります。
でもメタボリックシンドロームの診断基準って・・・
ここまで、3つの脂質異常症について説明してきました。
ここで、メタボリックシンドロームの診断基準をもう一度見てみましょう。
これをみていただくと、何か違和感がありませんか?
そう、高LDL-C血症はメタボリックシンドロームの基準に入っていません。
これはLDL-Cが動脈硬化に関係していないというわけではなく、むしろ逆で、
高LDL-C血症は既に動脈硬化について独立した危険因子である、ということです。
以前お伝えした通り、メタボリックシンドロームは複数の危険因子が集まることで、
一気に危険度が跳ね上がる、マルチプルリスクファクター症候群です。
そのため、既に単独で確立された危険因子である高LDL-C血症は除外されている
ということです。
脂質異常症と食事の関係
ここまで3つの脂質異常症がそれぞれ心血管疾患につながることをお伝えしてきました。
しかし同じ脂質異常症と言っても、病態が違うためそれぞれの原因も違います。
まずはそれぞれの疾患と原因となる栄養素との関係を示した表をご覧ください。
この表を確認しながら、それぞれ原因と対策を考えていきましょう。
まずは3つの脂質異常症の共通項として、肥満があります。
やはりこれは死の四重奏でも根幹になっている通り、全ての脂質異常症のリスクとなり得ます。
肥満の稿でもお話ししている通り、肥満の方はまずは3%程度の減量から始めてみましょう。
ではそれ以外のリスクについても考えていきましょう!
高LDL-C血症
飽和脂肪酸
飽和脂肪酸については、脂質についてまとめたこちらでもご覧ください。
飽和脂肪酸は摂取量に比例してLDL-Cを上昇させることがわかっています。
しかし極度の制限は逆に脳出血を起こす可能性を指摘されているため、
食事摂取基準では総エネルギー摂取量の7%以内を不飽和脂肪酸から摂ることを推奨しています。
多価不飽和脂肪酸
必須脂肪酸であり、n-6系とn-3系に分かれる不飽和脂肪酸ですが、
これらはLDL-Cを下げる作用を持ちます。
具体的には総エネルギー摂取量の5%を炭水化物から多価不飽和脂肪酸に変えた場合、
平均して2.8mg/dlのLDL-C低下につながるとされています。
またn-6系とn-3系について、分けて検討した報告もありますが、
n-6系は飽和脂肪酸から置き換えることで、LDL-Cが低下したと報告されています。
n-3系も心血管疾患の予防に有効とされていますが、n-6系のように
LDL-Cの低下との関連は明らかにされていません。
一般的に、n-6系脂肪酸は10g/day前後、n-3系脂肪酸は2g/day前後
の摂取を推奨されています。
コレステロール
続いて食事から摂取するコレステロールについてです。
実は健常者における、コレステロール摂取目標量は明らかにされていません。
その理由は
- 体内のコレステロールの70〜80%は体内で生成されたものである
- コレステロールは肝臓に蓄積され、血中濃度が一定になるように調整されている
- 摂取されたコレステロールの吸収率は20-80%と個人差が大きい
などがあります。
つまり血中コレステロールを決める要因は摂取量以外に多くあることが原因です。
しかし基準が無いからどれだけでも摂取してもいいというわけではありません。
摂取量と血中の量の関連は人それぞれ違うから一定の基準は決められない
ということです。
また既に高LDL-C血症と診断されている方であれば
200mg/day未満という上限が定まっています。
食物繊維
最後に超優秀栄養素の食物繊維です。
水溶性食物繊維はLDL-Cの低下を助けます。
3g/dayの摂取量増加でLDL-Cを5mg/dl下げるとされています。
低HDL-C血症
HDL-Cと関係する栄養素は実は明らかになっていません。
- アルコール摂取量が増えれば、HDL-Cが上昇する。
- 飽和脂肪酸、一過不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸全てがHDL-Cを上昇させる。
- トランス脂肪酸を減らすとHDL-Cが上昇する。
などの報告はありますが、いずれも現実的にどこまで意味があるのかは不明です。
今後の研究結果に期待しましょう。
高TG血症
糖質
使い切れなかったグルコースは体内でTGに変化すると言いました。
そのため糖質の過剰摂取は高TG血症のリスクとなります。
総エネルギー摂取量の5%分の糖質を脂肪酸に変えることで、
TGが10〜12mg/dl低下するとされます。
脂質の量を増やしたのにTGが減るというのだから、不思議な話です。
脂質異常症に特異的な糖質の摂取基準はありませんが、一般的な糖質の摂取目標量である、
50〜65%エネルギー以内の摂取を心がけると良いでしょう。
まとめ
いかがでしたか!?今日のまとめは以下の通りです。
- 脂質異常症は3つの種類があり、それぞれ原因と治療法が異なる
- 高LDL-C血症は不飽和脂肪酸<7%エネルギー、コレステロール摂取量<200mg/dayを目指す
- 低HDL-C血症は特筆すべき食事摂取基準なし
- 高TG血症は糖質の摂取量<50〜65%エネルギーを目指す
覚えることが多くて大変でしたね。。。
もしあなたが脂質異常症と診断されているのであれば、自分はどのタイプであるのか、
どのようなことに気をつけて食事をすれば良いか、ご確認頂ければと思います。
今回も最後まで読んで頂き、ありがとうございました!
健康な食事で豊かな未来を!
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