こんにちは!のうきんです!
今回はいよいよ最後の死の四重奏について解説していきます!
死の四重奏についてはこちらもご確認ください。
今回はメタボリックシンドロームの構成要素の最後の1つでもある、
糖尿病について解説していきます。
令和元年国民健康・栄養調査によると、
2019年の段階で、20歳以上で糖尿病が強く疑われる人は
男性で19.7%、女性で10.8%と報告されています。
言い換えると、男性では5人に1人、女性では10人に1人が糖尿病疑いということです。
国民病とも言えるこの病気、しっかり勉強していきましょう!
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糖尿病の定義・診断基準
まずはいつも通り、定義から見ていきましょう。
尿という字が入っていますが、糖尿病を一言で表すと
血中の糖の値が異常に高い状態が慢性的に続いている病態、です。
血液中の糖が多すぎて、尿にまで糖が漏れてきているため、
このような名前が付けられました。
糖はインスリンというホルモンによって細胞内に取り込まれ、
細胞内でエネルギーとして使用されます。
しかしインスリンの量が減ったり、インスリンの効きが悪くなると、
細胞内に糖を取り込めなくなり、血液中の糖の濃度が高くなります(高血糖)。
高血糖状態が持続すると、血管の壁を傷つけることで、動脈硬化が進行します。
また白血球という細菌やウイルスと戦う力が低下するため、感染症に弱くなります。
さらに糖尿病と診断されなくても、
インスリンの効きが悪くなる状態(インスリン抵抗性)になると、
高血圧、脂質異常症といった糖尿病以外のリスクを発症する可能性も増大します。
インスリン抵抗性は肥満(内臓脂肪の蓄積)とほぼ同等の状態とされており、
WHOの定めるメタボリックシンドロームは内臓脂肪の蓄積ではなく、
インスリン抵抗性を必須条件としています。
次に糖尿病の診断基準についてです。
糖尿病は血糖値とHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の値によって決まります。
血糖値は
- 早朝空腹時血糖値>126mg/dl
- 75g経口ブドウ糖負荷試験2時間値>200mg/dl
- 随時血糖値>200mg/dl
のいずれかを満たした場合、
HbA1cは6.5%以上の時、異常と判断します。
血糖値、HbA1cの両方で異常を認めた場合に、糖尿病と診断されます。
ちなみに糖尿病には1型と2型という2つのタイプがあります。
1型は自分の免疫系の異常により、インスリンが全く分泌されなくなるもので、
食生活との関連は基本ありません。
一方、2型は内臓脂肪の蓄積によるインスリン抵抗性が原因となっていますので、
食生活や運動習慣が大いに関係します。
そのため本稿では基本的に2型糖尿病について記載していきます。
糖尿病と疾患の関連
それでは糖尿病がどのように心血管疾患と関連しているかを見ていきましょう。
血管内に増えすぎた血糖は血管の壁を損傷させ、動脈硬化を助長すると言いました。
動脈硬化の詳しい機序は後日詳述します。
動脈硬化を助長する結果、糖尿病は心血管疾患のリスクを上げます。
心筋梗塞・狭心症との関連を調べた研究では、
糖尿病患者では死亡リスクは通常の2.8倍ともされています。
また脳梗塞の発症リスクを検討した研究では、
男性:1.9倍、女性:2.2倍、リスクは増加します。
心筋梗塞と脳卒中の発症率をまとめて比較した研究でも、
全体で1.5〜3.6倍のリスク上昇を認めており、
やはり2〜3倍程度は心血管疾患のリスクが上がると考えられそうです。
そして糖尿病はもちろんメタボリックシンドロームの構成要素の1つですので、
肥満、高血圧、脂質異常症などのリスクが複合することで、
一気に心血管疾患のリスクは上がります。
さらに、糖尿病には神経症、網膜症、腎症という
動脈硬化とは別の機序の三大合併症も存在します。
こちらについては割愛しますが、いずれにせよ複数の疾患を合併しうる、
危険な疾患であると思っていただければ良いです。
糖尿病と食事
それでは糖尿病と関わりの深い栄養素とエネルギーの関係について、
いつも通り食事摂取基準2020を参考に見ていきましょう。
エネルギー
糖尿病の根幹にある、インスリン抵抗性≒内臓脂肪蓄積=肥満をコントロールするのに
最も有用なものはやはりエネルギー摂取量の節制です。
内臓脂肪を減らすことでインスリン抵抗性を改善し血糖が改善されます。
アメリカで行われた糖尿病予防プログラムでは、
3年間で5%の減量を行うことで糖尿病の発症を55%抑制できたと報告しています。
ここでも緩徐かつ継続的な減量が有用であることが証明されています。
また目標とすべきエネルギー摂取量について、
以前に国立健康・栄養研究所の推定式を紹介しました。
しかし糖尿病患者においては、独自の目標エネルギー摂取量が設定されています。
それがこちら。
総エネルギー摂取量=目標体重(kg)×エネルギー係数
肥満の時と同じ式ですね。
目標体重は
65歳未満はBMIが22となる体重
65歳以上はBMIが22〜25となる体重
とされており、エネルギー係数は
軽労作(座っていることが多い):25〜30
中労作(通勤・通学。軽い運動などがある):30〜35
重労作(力仕事):35〜
となっています。
まずはこの式で求めたエネルギー摂取量を目安として食生活を改善し、
その後の体重の経過を見てエネルギー量の調整を行うことがお薦めです。
またエネルギーをどの栄養素から摂取するべきかについては明らかになっておらず
エネルギーの総量を制限できれば良いとされています。
そのため、特に糖質を制限すべき、といった根拠はありません。
摂取すべき栄養素のバランスについてはこちらもご参照ください。
たんぱく質
たんぱく質は腎臓に負担をかけるため、糖尿病性腎症を発症した場合、
摂取量を控えることが以前から推奨されていました。
しかし近年では
動物性たんぱく質の過剰摂取がインスリン抵抗性を増悪させ糖尿病の発症を助長させる
可能性が指摘されています。
またそれに伴い、心血管疾患の発症リスクも増大するとも言われています。
そのため糖尿病予防の観点からも、
たんぱく質の目標摂取量は食事摂取基準で定められている
20%を超えないことを推奨されています。
脂質
脂質についても、一般的な食事摂取基準に定められている基準を逸脱する指標はありません。
具体的には目標摂取量が
脂質総量:20〜30%エネルギー 飽和脂肪酸:7%エネルギー以内です。
しかし、n-6系やn-3系の多価不飽和脂肪酸は糖尿病発症のリスク低減につながる、
とも言われており、脂質の摂取量がやや多め(25%エネルギー以上)の方は、
不飽和脂肪酸の摂取量を増やすことを勧められています。
食物繊維
続いてスーパー栄養素の食物繊維です。
これまで、さまざまな疾患のリスク低減を果たしてきた食物繊維ですが、
もちろん糖尿病のリスクも下げてくれます。ほんとにすごいです。
糖尿病では、特に穀物由来の食物繊維がリスク低減に有効と言われています。
食物繊維18.3g/dayの摂取で、空腹時血糖を15.3mg/dl下げると言われており、
一般的な基準である、20g/dayを目標とするのが良いでしょう。
アルコール
実はアルコールは中等度の飲酒習慣であれば
インスリン抵抗性を改善し糖尿病発症の予防に有効と言われています。
もちろんアルコール自体がエネルギーになるため、
大量の飲酒を行えば逆に糖尿病発症のリスクとなります。
中等度とはエタノール量で20〜25g/dayとされており、
50〜60g/dayの摂取でその効果はなくなる、とされています。
実際に中等度の量とは日本酒1合、ビール中瓶1本、焼酎半合弱、ワイン2杯程度になります。
そのほかの食生活
血糖については食事の摂り方についても重要になってきます。
糖尿病では急激な血糖の変化というのは好ましくありません。
そのため食事の際にはゆっくりと血糖を上げることが大事です。
先に野菜(食物繊維)を食べてからご飯を食べる方が良い、
ということを聞いたことがある方もいると思います。
これは真実で、実際にHbA1cを下げることも報告されています。
またこれは食物繊維に限った話ではなく、
主食(たんぱく質)を先に食べることも有用とされています。
また朝食を抜いたり、就寝直前の夜食、不規則な食生活も
2型糖尿病のリスクと言われており、動脈硬化に繋がります。
まとめ
いかがでしたか!?今日のまとめは以下の通りです。
- 糖尿病は5〜10人に1人が罹患している国民病
- 心血管疾患の重大なリスク
- 適切な量のエネルギー摂取、十分な食物繊維の摂取、規則正しい食習慣が重要
これで死の四重奏の4つの解説が終わりました。
みなさま、お疲れ様でした!
どの疾患も心血管疾患の重大なリスクであり、これらを避けるだけで、
十分に健康な生活が送れます。
既に診断されている方はもちろん、そうでない人も、しっかり学んで
予防に努めましょう!
今回も最後まで読んで頂き、ありがとうございました!
健康な食事で豊かな未来を!
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