メタボに次ぐ生活習慣病「慢性腎臓病」

こんにちは!のうきんです!

前回までで、死の四重奏やメタボリックシンドロームを始め、

健康寿命の短縮につながる心血管疾患について説明してきました。

今回はメタボリックシンドロームには入っていないものの、

心血管疾患に関連し、なおかつ食生活が影響する疾患として、

慢性腎臓病について考察していきます。

さらに慢性腎臓病は増悪すると末期腎不全に進展し、

最終的に人工透析が必要となる可能性があります。

透析が必要となると、介護が必要とまでいかなくても、

著しく生活が制限されます。

このような状態にならないように、しっかりと学んでいきましょう!

慢性腎臓病の定義

まずはいつも通り定義から見ていきます。

腎臓とは左右に1つずつある、ソラマメ状の臓器です。

血液中の毒素や不要なタンパク質、余剰なカリウムを体外に排出します。

その腎臓の機能が慢性的な経過で低下する病態を慢性腎臓病と言います。

診断には

GFR(Glomerular filtration rate)という指標が使われます。

尿は腎臓の中の糸球体(しきゅうたい)と呼ばれる構造物で作られます。

ちなみに糸球体は腎臓1個につき、約100万個あります。

糸球体では普段、尿として排出される量の100倍の尿の元が生成されます。

これを原尿と呼びます。ここから99%が再吸収され、

残りが尿として排出されます。

GFRはこの原尿を作る力の指標です。

慢性腎不全は

  1. GFRが60以下
  2. たんぱく尿や血尿、画像上の腎臓の萎縮などの腎障害を示唆する所見

このどちらかが3ヶ月以上継続した場合に

慢性腎臓病と診断されます。

また

  1. GFR
  2. 慢性腎不全の原因
  3. 蛋白尿(尿にどのくらいタンパク質が漏れているか)

の3つの要素を踏まえて、以下の通り、重症度が決められています。

                                    CKD診療ガイド 2012より引用

また全体の重症度とは別に、GFRの値次第でG1〜G5まで重症度が細分化されます。

このステージ次第で、後述する食事制限が異なってきます。

慢性腎臓病と健康寿命

では慢性腎臓病はどれくらい、健康に影響するのでしょうか。

2012年の慢性腎臓病ガイドラインでは、当時の慢性腎臓病患者数を

1330万人と報告しています。

これは日本人の成人8人に1人の割合です。

これだけでいかに慢性腎臓病が多くの日本人に影響してくるかがわかるかと思います。

そして慢性腎臓病は死の四重奏とも密接に関連します。

内臓脂肪が増えると、尿から漏れるたんぱく質の量が増加します。

糖尿病は三大合併症に腎機能低下があり、透析導入の原因疾患第1位です。

高血圧・脂質異常症は動脈硬化を誘発させることで腎臓の機能を落とします。

このように慢性腎不全は死の四重奏により増悪し、

慢性腎不全が増悪すると、さらに死の四重奏を悪化させます。

慢性腎臓病に対する食事基準

上述の通り、慢性腎臓病の患者さんでは、GFRの値によって食事基準が定まっています。

                                     慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版

まずはこの表に従い、確認していきましょう。

エネルギー

健常者では国立健康・栄養研究所の推定式を使用しましたが、

慢性腎臓病の方は多くの場合、肥満症や糖尿病を合併しています。

そのため糖尿病や肥満症の時と同様に、摂取エネルギー量は通常よりも

かなり制限されます。

肥満症がなければ、

総エネルギー摂取量=BMI:22となる体重×25〜35kcal

肥満症があれば、

総エネルギー摂取量=BMI:22となる体重×20〜25kcal

と決められています。

糖尿病や肥満症についての記事も参考にどうぞ。

たんぱく質

たんぱく質は基本的には多く摂取すべき、とこれまでお伝えしてきました。

しかし慢性腎臓病においては、逆に摂取を制限する必要があります

なぜなら腎臓は不要なたんぱく質を体外に排出する臓器であるため、

たんぱく質を多く摂取することは腎臓の仕事を増やすことになるからです。

具体的には、GFRが45以下となる進行した慢性腎臓病では摂取の制限が必要です。

一般的には体重×1.0〜1.2g程度のたんぱく質摂取が必要とされているため、

上記にGFRに該当する方はたんぱく質摂取量を抑える必要があります。

しかしフレイルの予防などにおいて、たんぱく質摂取は重要です。

そのためかかりつけ医と相談し、個人個人で目標とする値を決めることが大事です。

食塩

高血圧と同様に、慢性腎臓病でも食塩は摂取を制限すべきとされています。

上限は高血圧と同様に6g/dayです。

ただし6g/dayというのは実際には非常に厳しい値です。

そのためG1〜2程度の慢性腎臓病では健常人と同等まで緩和も可能とされています。

しかしG3以降は6g/day以下の遵守が必要とされています。

また慢性腎臓病では下限も設定されており、3g/day以下の減塩は推奨されていません

※3g/day以下の減塩は現実的に無理だと思いますが笑

カリウム

たんぱく質と同様にカリウムも摂取すべき栄養素とお伝えしてきましたが、

慢性腎臓病の場合は過剰摂取は禁物です。

カリウムは腎臓で排出されるため、腎臓の機能が落ちると逆に蓄積します。

カリウムが血中に蓄積した状態は高カリウム血症と呼ばれ、

致死的不整脈の高リスク状態となります。

そのため慢性腎臓病が進行すれば、カリウムも摂取制限が必要です。

一般に男性では2800mg/day、女性では2400mg/day以上の摂取が必要ですが、

腎臓病の病期次第で、上記の表の通り制限が推奨されています。

まとめ

いかがでしたか!?今日のまとめは以下の通りです。

  1. 8人に1人は慢性腎臓病
  2. 死の四重奏や心血管疾患に関連する
  3. エネルギー量・たんぱく質・食塩・カリウムの制限が必要

慢性腎臓病では、たんぱく質やカリウムなど、一般的に推奨されるべき栄養素が

制限すべき栄養素となります。

そのため、慢性腎臓病と診断された場合は、何を摂取すべきで何を制限すべきか

正確に把握しておく必要があります。

ぜひ、このブログで正しい知識を学んでください。

今回も最後まで読んで頂き、ありがとうございました!

健康な食事で豊かな未来を!

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のうきん
ボディーメイクをきっかけに栄養の重要性に目覚めた現役脳外科医。 病院内では手術で、病院外では栄養で。 日本の健康寿命を伸ばします。