死の四重奏 第二曲 〜高血圧〜

こんにちは!のうきんです!

今回も心血管疾患につながる基礎疾患4つ(死の四重奏)について解説していきます!

死の四重奏についてはこちらもご確認ください。

今回は日本人の3人に1人が罹患していると言われている高血圧について

解説していこうと思います。

高血圧は肥満に次ぐ生活習慣病であり、心血管疾患の重要なリスクファクターです。

しっかり覚えていきましょう。

高血圧の定義

まずは血圧について簡単に確認しましょう。

一般的に血圧は2つの数値が表示されることはご存知でしょう。

例えば、120/70 mmHgのように。

これは左の数値が収縮期血圧、右の数値が拡張期血圧と呼ばれます。

ちなみにmmHgは血圧の単位ですが、ミリメートルエイチジーとも読めますし、

かっこよく読むならミリメートルマーキュリーとも読みます笑。

この収縮期/拡張期と言うのは、心臓の動きのことを意味しており、

心臓が血液を血管に送るために収縮している時相を収縮期

心臓が血管から血液を受け取るために拡張している時相を拡張期

と言います。

そして血圧は血管にかかる圧力のことを言いますので、心臓から直接血液を送られている

収縮期の方が必然的に血圧は高くなります

話を高血圧に戻します。

高血圧の基準は、診察室で測った血圧が、収縮期もしくは拡張期のどちらかで

140/90 mmHgを超えた場合と定義されます。

また、診察室では普段と異なる環境のため、緊張により高血圧になりやすいとされています。

白衣高血圧、と呼ばれることもあります。

そのため、家庭での血圧が135/85 mmHg以上でも高血圧とされます。

さらに、血圧の値次第で重症度が分類されており、血圧以外のリスク因子も踏まえて、

低リスク群〜高リスク群に層別化されます。

                                              2019高血圧治療ガイドライン

この表で見ると140/90 mmHgを超えなくても、高値血圧というグループが存在します。

さらにさらに、正常血圧は120/80 mmHgとされていますが、

高値血圧との間の血圧についても高血圧予備軍として、加療経過観察が推奨されています。

                                             2019高血圧治療ガイドライン

ちなみに上記は診察室血圧の話です。

高血圧と診断されている方は日本人の3人に1人と言われていると、言いましたが、

予備軍を含めると恐らく、半分以上が血圧関連で加療が必要となるでしょう。

事実、メタボリックシンドロームでは診断基準の一つに高血圧がありますが、

その基準は上記の表で言う高値血圧が採用されています。

 厚生労働省 e-ヘルスネット様より参照 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-01-003.html

では次に、高血圧が影響する疾患群について見ていきましょう

高血圧と疾患の関連について

上述した通り、高血圧はメタボリックシンドロームの診断基準の一つです。

高血圧+基準範囲を超える腹囲を持つ患者と

非メタボリックシンドローム患者を比較した研究では、

140/90 mmHgを高血圧とした場合、2.1倍

135/85 mmHgを高血圧とした場合、1.8倍

心血管疾患を発症しやすいとされています。

つまり、高血圧と診断されなくても、

腹囲などのそのほかの要因が加わると死亡率が上昇してしまう、と言うことです。

そのためメタボリックシンドロームの診断基準としての血圧は

135/85 mmHgが採用されています。

メタボリックシンドロームのリスクになると言うことは、当然、動脈硬化を介して

心血管疾患のリスクにもなります。

そのほかにも、心不全、慢性腎臓病、血管性認知症のリスクにもなると言われています。

高血圧が原因となった心血管疾患発症者は年間10万人と言われ、

心血管疾患の最大のリスクと言われています。

また、収縮期血圧の平均値を4 mmHg低下させることにより、

脳卒中による死亡数:約1万人、心疾患による死亡数:約5千人を低下させる

とされています。

以上より、高血圧は心血管疾患に大きく寄与しており、

高血圧を改善させることで、健康な生活へ近づくことができると言えるでしょう。

では高血圧を改善させるために、

食生活においてはどのようなことに気をつける必要があるのでしょうか。

高血圧を改善させる食生活は?

高血圧には本態性高血圧と二次性高血圧があります。

二次性高血圧は、副腎腫瘍や腎動脈狭窄症といった病気により、高血圧となったものです。

本態性高血圧は生活習慣が原因となっているものです。

そして、高血圧患者のほとんどが本態性高血圧です。

つまり多くの方が生活習慣≒食生活が原因で高血圧となっているのです。

そのため、高血圧の改善には食生活の見直しが必須と言えます。

では食事摂取基準2020が提示している、

エネルギー・栄養素と高血圧の関係性をご覧ください。

                                            参照:食事摂取基準2020

この表を見ると、

高血圧を増悪させるものとして、ナトリウム、肥満、アルコール

高血圧を改善させるものとして、カリウムがありそうです。

一つずつ見ていきましょう。

ナトリウム

ご存知の方も多いと思いますが、ナトリウムは高血圧の最大のリスクです。

ナトリウムと後述するカリウムについてはこちらもご覧ください。

ナトリウムは食塩に含まれていますが、日本人は他国と比較して、

食塩を多く摂取している傾向にあります。

WHOが発表している食塩の摂取目標量は5g/day以内となっていますが、

平成28年の国民健康・栄養調査では、日本の成人の食塩摂取量の中央値は

男性:10g/day 女性:9g/day

程度とされており、目標量の倍近くをとっていることになります。

理由としては、日本人は古来から漬物や味噌汁などの塩分過多の食事が多い

と言うことがあります。

そのため、我々日本人が食事で高血圧を改善させようと思うならば、

食塩の摂取量を減らすことが手っ取り早そうです。

では食塩を減らせば、どの程度血圧を下げられるのでしょうか。

減塩と血圧低下の関係を調べた研究は多数あり、

1g/dayの減塩につき、収縮期血圧を1mmHg下げられる

と言われています。

え?それだけ?と思ってしまいそうですが、よくよく考えてください。

先ほど収縮期血圧を4 mmHg下げると、

心血管疾患による死亡を、年間約1万5千人減らすことができると言いました。

1日に摂る塩の量を4g減らすだけで、1万5千人の命を助けられる

ってすごい事だと思いませんか?

こんなにお手軽で効果の高い治療はそうそうありません。

食塩の摂取目標量は

男性:7.5g/day以内

女性:18〜49歳:6.5g/day

   50歳以上:7.0g/day

とされていますが、既に高血圧と診断されている方では、

6g/day未満を強く推奨されています。

食塩摂取量を減らす方法としては、

  1. 麺類の汁を残すこと
  2. 漬物を減らす
  3. 味付けを薄めにする、食塩が少ないもの(酢、ケチャップなど)で代用する
  4. 外食や加工品の摂取を減らす

などが有効です。

肥満

肥満の改善も高血圧に対して有効です。

詳しくはこちらもどうぞ。

肥満が高血圧に与える影響の研究は多数あり、その1つでは

肥満者は非肥満者と比較して、高血圧に進展するリスクは2倍高いと報告しています。

ではどの程度の肥満の改善を目指すべきでしょうか。

肥満に対しての減量は、上記リンク先の肥満の稿でもお話ししましたが、

急速かつ過度の降圧ではなく、緩徐に継続した減量が有効です。

減量と高血圧の関係を調べた研究では、

4kgの減量収縮期血圧は-4.5mmHg、拡張期血圧は-3.2mmHg

の血圧低下が期待されます。

アルコール

アルコールも高血圧に影響すると言われます。

アルコールは糖質に属しますので、エネルギーを産生します。

しかも1gあたり7kcalと普通の糖質よりも多いエネルギーを産生しますので、

肥満にもつながります。

さらにアルコールは単独で高血圧のリスクになります。

飲酒習慣のある軽症高血圧患者における研究では、飲酒量をエタノール換算で

56.1ml/dayから26.1ml/dayに減量したところ、

収縮期血圧が2.6-4.8 mmHg、拡張期血圧が2.2-3.0 mmHg低下した

と言われます。

その結果を踏まえ、高血圧治療ガイドラインでは、高血圧患者はアルコールの摂取量を

男性:20〜30ml/day、女性:10〜20ml/day

以下にするよう推奨されています(エタノール換算)。

ちなみにエタノール換算で20〜30ml/dayというのは

日本酒1合、ビール中瓶1本、焼酎半合弱、ワイン2杯

程度に相当します。

カリウム

カリウムは腎臓でのナトリウム排泄を促進することで、ナトリウムに拮抗する作用を持ちます。

そのため、ナトリウムの過剰摂取による高血圧に対してカリウムの摂取が有効です。

WHOは摂取目標量を3510mg/day以上としていますが、

現在の日本人の摂取量からはほど遠く、現在の食事摂取基準が定める目標量は

2400〜3000mg/dayとされています。

しかし、WHOがカリウム摂取による血圧改善効果を示している値は3510mg/dayのため、

既に高血圧と診断されている方は、目標量を超えた摂取を目指すべきかもしれません。

そのほかの栄養素

n-3系不飽和脂肪酸

n-3系不飽和脂肪酸は多価不飽和脂肪酸の一種である、必須脂肪酸の一つです。

主に魚に多く含まれる栄養素ですが血圧低下に有効とされています。

日本人の摂取目標量は概ね2g/day程度ですが、

3g/day以上の摂取で、有効な血圧低下を得られるとされています。

食物繊維

食物繊維は、以前もお話ししたように、健康に有利な効果が多くある栄養素です。

その一つに血圧低下効果があり、10.7g/dayの摂取量増加

血圧低下作用があるとされています。

日本人の摂取量の中央値が13g/dayほどで、目標量が20g/dayほどなので、

ちょっと達成するのは大変ですが、もともと食物繊維の摂取量が少ない方は

トライしてみてもいいかもしれません。

まとめ

いかがでしたか!?今日のまとめは以下の通りです。

  1. 高血圧は多くの人が罹患している疾患
  2. 心血管疾患の重大なリスクであり、死亡率も上がる
  3. ナトリウム・カロリー・アルコール量を減らすべき
  4. カリウム・必須脂肪酸・食物繊維を摂るべき

高血圧は多くの人に関係します。

そして努力次第で大きな成果が得られる病気です。

ぜひ高血圧について正しく理解して、健康な体を手に入れましょう!

今回も最後まで読んで頂き、ありがとうございました!

健康な食事で豊かな未来を!

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のうきん
ボディーメイクをきっかけに栄養の重要性に目覚めた現役脳外科医。 病院内では手術で、病院外では栄養で。 日本の健康寿命を伸ばします。